2009年4月5日日曜日

恋の手本となりにけり~近松門左衛門『曽根崎心中』より~











 此の世の名残。夜も名残
 死に行く身をふれば。
 あだしが原の道の霜。
 一足づゝに消えて行く。
 夢の夢こそあはれなれ。
 あれふればの。
 七つの時が六つなりて。残る一つが今生の。
 鐘の聞納め。寂滅為楽とくなり。


小夜子の胸を震わせた近松門左衛門『曽根崎心中』の道行の件です。
二十歳前の演劇学生だった私が近世の文学を選んだのは
絵になるこんな一文に魅せられたからかなぁ…。
これを舞台化・映像化してみたいなっていう
ぼんやりした色のついた夢を見ていました。
こんなに強く愛しあった結果直面した終焉に
なお愛が深まってゆく美学に憧れすら感じました。

もちろん、実際の死は痛みと苦しみを感じるものですし
お初と徳兵衛にとっては追い込まれて他の選択はなかったとも言えますし
冷静に考えれば究極の美がそこにあるとは言えないのですけど
それをここまで美しく仕上げた近松の才能に
ショックを受けたんですね…。


なぜ今『曽根崎心中』なのか?
それは、4月7日にこの心中事件が起こったという文献が残っていることと
3月末に小夜子が所用で曽根崎に訪れた際
この【お初天神】を通って学生時代に学んだお初と徳兵衛を思い出したこと
そして小夜子がブログシリーズのタイトルに“美学”とつけてこだわるのが
切り取った瞬間が絵になる生き方に憧れるからであり
その最初の出会いがこの『曽根崎心中』の道行だからでしょうか…。



小夜子@o(・"・。)β。.:*・゚☆.。.:*・

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